LIVゴルフとは何なのか?|チーム戦・ショットガン・巨額賞金などPGAとの違いを徹底解説


LIVゴルフ設立の知られざる経緯

2022年6月9日(木)に英国ロンドンのセンチュリオンクラブで開幕した「リブゴルフ」。

大物選手の引き抜きによるPGAとの確執や、スポンサーであるサウジアラビアが人権問題を抱えバッシングが殺到していることなどにより、波乱のスタートとなっている新ツアー。

ここまでの混乱を招いてまで、なぜこの新リーグは立ち上がったのか?


まずはその設立経緯から振り返る。

グレッグ・ノーマンの野望

LIVゴルフを設立したのは、PGAツアーで20勝を誇るオーストラリア出身のスーパースター:グレッグ・ノーマン

グレッグ・ノーマン

ゴルフ用品マグレガーの大株主でもあった彼は、ゴルフ設計やアパレル、更にはワイン販売など、多方面のビジネスも手掛けていた。

プライベートでは2008年に元女子プロテニスプレイヤー:クリス・エバートと再婚。

ローラ前夫人には1億ドルの離婚慰謝料を払ったことを明かしていた彼は、ビジネスパーソンに転身し精力的に活動していた。

遡ること1993年。

2回目の全英オープンを制したノーマンは、「少ない選手・少ない試合数・高額賞金」という今回の新リーグと酷似したコンセプトの「ワールドゴルフ・ツアー」を構想していた。しかし当時のPGAコミッショナー:ティム・フィンチェム氏は、これに反対し「新リーグに行った選手はPGAから追放する」と警告。この時ノーマンの夢は、PGAによって潰されたのだ。

ところがノーマンの提案から3年後(1996年)、フィンチェム氏は「世界ゴルフ選手権(World Golf Championship-通称WGC)を発表。WGCといえば、タイガー・ウッズや松山英樹を歴代優勝者に抱える世界4大メジャー(マスターズ、PGAチャンピオンシップ、全米、全英)に次ぐ世界大会だ。

ノーマンはこのフィンチェム氏が提唱したWGCに対して「無断でコンセプトを模倣された」と憤慨。この時の遺恨が今回のLIVゴルフ設立のひとつの背景となっている。

2021年10月30日、ノーマンは新会社「LIVゴルフ・インベストメンツ」を創設し、初代最高経営責任者(CEO)に就任。

「ノーマンの逆襲」が、今まさに始まった。

【追記】2022年全英オープン開幕前の記者会見において、タイガー・ウッズがLIVゴルフへの強烈な批判を展開したが、その中でもこの「ノーマンの逆襲」について、タイガーウッズは「90年代初頭にグレッグが、これ(今回立ち上がったLIVゴルフ)と同じようことをしようとしたのは知っています。」とコメントしています。

スター選手大量移籍によるPGAとの対立

コロナ禍に着々とLIVゴルフ設立準備を進めたノーマン。

彼はサウジアラビア政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)の資本協力を受け、PGAの名だたるスター選手たちのスカウティングに成功した。注目すべきは続々LIVゴルフに加わってくる以下メジャーチャンピオンたちだ。

LIVゴルフに参戦したメジャーチャンピオンたち

フィル・ミケルソン(2004/2006/2010年マスターズ、2005/2021年全米ゴルフ選手権、2013年全英オープン)

ダスティン・ジョンソン(2020年マスターズ、2016年全米オープン)

チャール・シュワーツェル(2011年マスターズ)

ルイ・ウーストハウゼン(2010年全英オープン)

セルヒオ・ガルシア(2017年マスターズ)

グレーム・マクドウェル(2010年全米オープン)

パトリック・リード(2018年マスターズ)

ブライソン・デシャンボー(2020年全米オープン)

ブルックス・ケプカ(2017&18年全米オープン、2018&19年全米プロゴルフ選手権)

マルティン・カイマー(2014年全米オープン)

ヘンリク・ステンソン(2016年全英オープン)

バッバ・ワトソン(2012&14年マスターズ)

キャメロン・スミス(2022年全英オープン)

LIVゴルフ参戦選手の大きな代償

PGAコミッショナーのジェイ・モナハン氏は「LIVゴルフに参戦した選手はPGAツアーを追放し、PGAツアーへの復帰はできない」ことを明言。LIVゴルフの初戦(ロンドン)に出場した選手たちには、サスペンデッド(資格停止)処分が下された。しかし、それでも何故次々とPGAのスーパースターたちはLIVゴルフに参戦するのか?

それは巨額の賞金に他ならない。

LIVゴルフ「巨額の賞金」とは一体いくらなのか?

LIVゴルフの賞金は1戦につき、賞金総額2,500万ドル。1ドル140円換算で35億円という破格の金額だ。

これは4大メジャーのどれと比べても1.5倍程度の金額だ。

2022年のメジャー賞金総額

マスターズ:1,500万ドル(20億1,000万円)

全米プロ選手権:1,500万ドル(20億1,000万円)

全米オープン:1,750万ドル(23億4,500万円)

全英オープン:1,750万ドル(23億4,500万円)

LIVゴルフは全8試合、毎回4大メジャー以上の賞金となれば、名誉よりお金(ビジネス)に動く選手が多くでることも納得だ。



【関連記事】LIVゴルフの賞金、1位は2試合で9億円以上~1試合あたりPGA賞金王シェフラーの4.5倍を稼ぐ

予選カットなし~出場すれば最低1,600万円!

しかも出場選手はたったの48人で予選カットはない。すなわち出場すれば、全員もれなく賞金を得られるのだ。

ちなみに開幕戦ロンドンの最下位は、アンディ・オグレツリー(米国)だったが、彼が手にした賞金は、約1,600万円となっている。

2022年は8試合が予定

会場期間個人優勝チーム優勝
1.ロンドンセンチュリオンGC6/9~6/11チャール・シュワーツェルスティンガーGC
2.ポートランドパンプキンリッジGC6/30~7/2-ブランデン・グレイス4エイセズGC
3.ポートランドトランプナショナルゴルフクラブ7/29~7/31ヘンリク・ステンソン4エイセズGC
4.ボストンザ・インターナショナル9/2~9/4ダスティン・ジョンソン4エイセズGC
5.シカゴリチャードハーベストファームズ9/16~9/18
6.バンコクストーンヒル10/7~10/9
7.ジッダロイヤルグリーンズゴルフ10/14~10/16
8.マイアミトランプナショナルゴルフ10/27~10/30

全12チームによるチーム戦

LIVゴルフ最大の特徴はPGAなど他のゴルフツアーが基本としている個人戦に加え、1チーム4人によるチーム戦も行われることだ。

第4戦ロンドンのチーム分け


【関連記事】第4戦ロンドンのチーム分けが発表!C.スミスはALLオーストラリア「パンチGC」キャプテンに

チーム名称は以下の通り12種類で固定となっているが、試合前に選任された12人のキャプテンによりメンバーを「ドラフト」で決定する仕組みになっている(第1戦ロンドンでは盛大なドラフト会議が行われたが、2戦目以降は国籍別のチーム構成が色濃くなっており、運営側でかなりの調整が行われていると想定される)。

4エイセズGC|ダスティン・ジョンソン率いる最強米国4人組

スティンガーGC|4エイセズと双璧のALL南アフリカチーム

トルクGC|ALL日本からニーマンをキャプテンにした多国籍チームに一新

ファイヤーボールズGC|「神の子ガルシア」が導くLIVの頂点

クラッシャーズGC|デシャンボー率いるチームにラヒーリが加入

スマッシュGC|ケプカ兄弟にユーラインが合流し3チーム目のALLアメリカに

ハイフライヤーズGC|LIVでも高く飛べるのか?頑張れ逆境ミケルソン

パンチGC|C.スミスをキャプテンに巻き返しを図るALLオーストラリア

クリークスGC|メジャーチャンプ2名を要するALL欧州メンバー

アイアンヘッズGC|ケビン・ナをキャプテンにアジアンツアーの強者が集う

マジェスティックスGC|ステンソン加入でさながらライダーカップ欧州チームに

ニブリックスGC|B.ワトソンをノンプレイヤーキャプテンとして迎えた2チーム目のALLアメリカン

チーム戦の成績はどのように決まるのか?

チーム戦の成績は、初日と2日目は各チームの上位スコア2名の合計、最終日は各チームの上位スコア3名の合計できまる。

第4戦ボストンで優勝した4エイセズGCを例にとってみると以下の通りとなる。

【初日】
ダスティン・ジョンソン(-3)→チームスコアに採用
パトリック・リード(-1)→非採用
テイラー・グーチ(-7)→チームスコアに採用
パット・ペレス(-3)→チーム2位と同スコアのため非採用
→初日のチームスコア(-10)

【2日目】
ダスティン・ジョンソン(-7)→チームスコアに採用
パトリック・リード(+2)→非採用
テイラー・グーチ-(-5)→チームスコアに採用
パット・ペレス(-4)→非採用
→2日目のチームスコア(-12)

【3日目】
ダスティン・ジョンソン(-5)→チームスコアに採用
パトリック・リード(-4)→チームスコアに採用
テイラー・グーチ(-1)→チームスコアに採用
パット・ペレス(E)→非採用
→3日目のチームスコア(-10)

→3日間のチームスコア(-32)


ショットガンスタート

通常、プロゴルフの試合はアウトスタートの1番ホールとインスタートの10番ホールから開始されるが、LIVゴルフでは「ショットガンスタート」といって16ホールから3人1組となって、同時にスタートする。

※最終日の上位3人は10分遅れでスタート。

これにより大会の時間は、午後13時15分スタートで約5時間あれば終了する短時間な大会運営が可能になっている。

これにより従来、時間差による天候の有利・不利という問題があったが、この問題は一挙に解決されることにも繋がっている。

音楽ライブと一緒になった爆音ゴルフツアー

ゴルフといえば、選手がプレイに集中できるよう静かな中でプレイすることがこれまでの当たり前だったが、LIVゴルフは最大のコンセプトとして「GOLF,BUT LOUDER(ゴルフだけどもっと騒がしく)」という信じられないようなコンセプトを掲げている。

事実LIVゴルフのライブ放送やアーカイブ放送を見れば、特にクラブハウス近くのホールではノリノリの音楽がかかっていることがお分かりいただけるはずだ。

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この点についてはタイガー・ウッズも「大音量の音楽の元でプレイするなどの雰囲気、それらはやはり(PGAツアーなどとは)違うよ。」と苦言を呈している。

ちなみに音楽は試合中のみならず、開幕前には大物歌手を呼んだライブが毎回開催されている。

全試合オンラインで無料で見られる


公式サイトにおいては国別の視聴方法として有料サービスが紹介されている(日本の場合はダゾーン)が、これまで行われた3試合については、ライブ映像、アーカイブ映像、ハイライト映像が全て公式サイトやYoutubeで無料で視聴可能となっている。

【関連記事】LIVゴルフの放送(無料)はどこで・いつみられるのか?

また第4戦からは日本のゴルフネットTVが公式チャンネルとして、日本語解説も行っている。

2022年LIVゴルフスケジュール

PGAをはじめとする伝統の団体との強烈な軋轢とともに、ゴルフに全く新しい風をもたらしつつあるLIVゴルフ。2022年は以下8試合が予定されている。

6/9~6/11 開幕戦:ロンドン(英国)センチュリオンククラブ

6/30~7/2 第2戦:ポートランド(米国)パンプキンリッジゴルフクラブ

7/29~7/31 第3戦:ベッドミンスター(米国)トランプナショナルゴルフクラブ

9/2~9/4 第4戦:ボストン(米国)ザ・インターナショナル

9/16~9/18 第5戦:シカゴ(米国)リチャードハーベストファームズ

10/7~10/9 第6戦:バンコク(タイ)ストーンヒル

10/14~10/16 第7戦:ジッダ(サウジアラビア)ロイヤルグリーンズゴルフ&カントリークラブ

10/27~10/30 第8戦【プレーオフ】:マイアミ(米国)トランプナショナルドラルゴルフクラブ

第7戦終了後のビッグボーナスとプレイオフ

第7戦が終了した段階で、個人成績TOP3の選手には追加のビッグボーナスが用意されている。

7戦までの個人1位1800万ドル約25億2,000万円
7戦までの個人2位800万ドル約11億2,000万円
7戦までの個人3位400万ドル約5億6,000万円

また第8戦は「チームプレイオフ」という形で、トーナメント形式のチーム戦が行われることになっている。

ここでも巨額の賞金が用意されている。

最終戦12位のチーム賞金100万ドル1人あたり3,500万円
最終戦11位のチーム賞金120万ドル1人あたり4,200万円
最終戦10位のチーム賞金140万ドル1人あたり4,900万円
最終戦9位のチーム賞金160万ドル1人あたり5,600万円
最終戦8位のチーム賞金180万ドル1人あたり6,300万円
最終戦7位のチーム賞金200万ドル1人あたり7,000万円
最終戦6位のチーム賞金225万ドル1人あたり7,875万円
最終戦5位のチーム賞金250万ドル1人あたり8,750万円
最終戦4位のチーム賞金275万ドル1人あたり9,625万円
最終戦3位のチーム賞金300万ドル1人あたり1億500万円
最終戦2位のチーム賞金800万ドル1人あたり2億8,000万円
最終戦 優勝のチーム賞金1600万ドル1人あたり5億6,000万円

2022年、ゴルフ界はLIVゴルフという黒船によって大きな転換を迎えているのである。